「民事再生が可能でしょうか?できれば民事再生をしたいのですが」
こういったご相談が増えています。
ただ、民事再生の「メリット」「デメリット」が分かりにくいために、はやめに民事再生の準備をすすめるべき法人がタイミングを逃してしまうケースをよくみかけます。
逆に、「自主再建でいけるのではないか」と思われるケースで民事再生を選択し、かえって法人の「再生」が困難になってしまったという相談も受けることがあります。
ですので、民事再生の大まかな全体像(メリット・デメリット)を理解することが重要です。
細かな点は、後に軌道修正が可能です(逆に、事業再生を進める中で細かな修正点が多々出てくるのが普通です)。
今回は、民事再生の大まかな全体像(おもなメリット・デメリット)を説明します。
「民事再生をすべきか?」「自主再建が可能か?」という事業再生の方針・スキームという重要な決定をするための材料になると思います。
まずは判断の順序と主な判断要素を図解で説明します。
「資金繰りが悪化した」、「業績が悪化した」という場合に「①再建できるか?」という判断からスタートして、最終的に「自主再建」にたどり着くことができるかどうかを検討することになります。以下、順番に見ていきます。
① 再建できるかどうか?
<判断要素>
⑴ 非常に重要なのが「経営者のやる気・再生に向けた覚悟」です。意外に思われるかもしれませんが、これがないと再建はできません。
やはり資金繰りが苦しい、業績が悪化したという厳しい状況ですので、ここが肝心です。
⑵ 資金繰りが持つかどうか。再建には一定程度、時間がかかります。言うまでもないかもしれませんが、資金繰りが持つかどうかが重要です。
⑶ 償却前営業利益が黒字見込みかどうか。再建を進めても、償却前営業利益の黒字見込みがない、となると再建は困難と考えられます。
主に以上の3点から判断して、「再建できない」と判断されれば破産や特別清算、事業廃止を検討することになります。
逆に「再建できる」と判断されれば、次のステップに進むことになります。
※ほかにも様々な判断要素がありますが(従業員の状況等)、まずは上記3点です。
② 民事再生の申し立てが不可欠と考えられる状況かどうか?
次に、「再建できる」として、民事再生が不可欠かどうかを判断します。
この点が、非常に重要です。民事再生の大まかな全体像(おもなメリット・デメリット)と関わる点です。
民事再生のメリット
■裁判所を通じて、原則として、すべての債権者に対して民事再生の効力が及びます。
■一部の債権者が個別の回収行為を行っている(行おうとしている)←止めることができます。
■裁判所のスケジュールにて再生計画を提出し、再生計画が認可されれば、再生計画にしたがって一部弁済を行います。
民事再生のデメリット
■全債権者が対象となるので、取引先も対象となり、取引が中止・現金払いとなる等の障害が発生するリスクがあります。
■調査会社・報道を通じて、一般に「民事再生の申立」が明らかになるので、風評被害が発生するリスクがあります。
以上の点を考慮して、民事再生の申し立てが不可欠かどうかを判断します。
⑴ 手形不渡りが間近
⑵ 債権回収が実行されている
⑶ 仕入れ先への支払いを停止しないと資金繰りが回らない
⑷ 一部の債権者が再建に対して強硬に反対している
主に以上のような状況があると、「民事再生を申し立てるほかない」という結論に至ります。
逆に、以上のような事情が無ければ、民事再生の申立が不可欠とまではいえないので、次の判断に進みます。
③ 金融機関の同意の見込みがあるか
民事再生が不可欠ではない場合、次に金融機関の意向が十両になります。
この点が「自主再建できるかどうか」を検討する上で非常に重要です。
⑴ 再生価値がある。
⑵ 自力で運転資金を確保できる(スポンサーなど)。
⑶ 業績悪化の原因を除去できる。
以上のような状況であれば、金融機関は自主再建に向けて「同意する」と見込まれます。
逆に、以上のような状況になければ、自主再建は困難ですので民事再生の申し立てを検討することになります。
④ リスケが可能か?
最後は、リスケが可能かどうかです。
金融機関は、償還年数(15年以内か)や収益力の改善等を考慮して、リスケが可能かどうか判断します。
リスケが可能となれば、金融機関とリスケについて合意し、利息払いのみに切り替えて、すこしでも運転資金の確保に努めることになります。
こうなれば、自主再建が可能、ということになります。
逆に、償還年数が非常に長期となる、収益力の改善が見込まれないといった事情によりリスケができないとなると、自主再建が困難になります。
すなわち、約定弁済(金融機関と合意した元利の支払い)の期限を徒過して、金融機関による預金相殺や仮差押、保証協会の代位弁済が行われるといった事態に陥ります。
こうなると、民事再生や債権カット(第二会社方式といったスキーム)を検討することになります。
以上が「民事再生をすべきか?」「自主再建が可能か?」という判断をするために考慮すべき、「民事再生のおもなメリット・デメリット」になります。
なお、当事務所における「再生案件についての実績」は、「弁護士紹介」をご覧頂きたいです。
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