民事再生での注意点とデメリット

■ 再生計画には債権者の頭数の過半数と債権額の50%以上の同意が必要です。

債務者としては、できれば破産した場合の配当をわずかに上回る程度の金額を、最長の10年間で弁済する計画で、再生計画を認めてほしいところです。

しかし、債権者にしてみれば分割で少しくらい多く受け取るよりも、直ちに少ない金額でもよいから回収したいと考える場合もあります。その場合には、債権者が、債務者の再建が事実上不可能になるような再生計画しか同意しないという対応も予想されます。

このような場合、民事再生手続による再建はできないので、事前に債権者の意向を把握し、債権額において50%以上、かつ、頭数において過半数の債権者から了承を得られるように、会見者に対する説得交渉が何より重要になります。

なお、通常、事業が継続する場合においては、取引債権者との取引も継続することが多く、頭数の過半数の債権者に関しては再建についての協力を取付けやすいと思われますので、債権額において多くを有する金融債権者の説得が中心となることが多いと思います。

 

■ 弁済原資の確保

民事再生手続開始の事実は官報に掲載されます。また、基本的にすべての債権者を対象としますので、広範に情報が流れることになります。当然、新聞などのメディアが報道することもあります。そのため、民事再生手続を申し立てると、債務者の社会的信用が低下し、取引先への支払条件も厳しくなり、営業力も低下する危険性があります。すなわち、取引先が民事再生開始後も債務者企業と取引を継続するかはまったくの未知数であり、取引をやめるか、たとえ行ったとしても取引条件が非常に厳しくなり、現実としては、取引先が現金取引しか応じてくれなくなるなど、営業環境の悪化が強く懸念されます。

この点が、取引先に対しては再建事実を秘匿することが可能な私的整理と大きく異なる点であり、民事再生手続を選択する際に、最大に懸念されるべき点でしょう。

したがって、民事再生手続によって企業の再建を図るには、債務者に営業環境が悪化してもなお、近い将来には営業黒字が確保できるような強力な営業力や十分な資産の確保などが必要になるでしょう。

仮に、再生認可の決定を得ても、業績が回復せず、弁済原資が確保できない場合、民事再生手続きの中止となり、強制的に破産手続きに移行しますので、注意が必要です。

 

■裁判所や監督委員による監督が行われます。

経営陣は継続して経営できるとはいえ、原則として、通常の営業行為に属さない財産の処分や新たな債務の負担などは自由にできません。

すなわち、民事再生手続が開始された場合、裁判所は監督委員(通常弁護士)を選任し、経営陣による不動産の処分、金銭の借入れなど財務内容に影響を与えそうな行為は監督委員の同意なくしては行うことができなくなります。

当然のことですが、債権者を公平かつ平等に取り扱わねばなりませんので、経営陣が勝手に一部の債権者だけに債務弁済することはできません。

経営人為問題があり、経営を任せておけないような状態の時は裁判所から管財人が選任されることもあります。調査委員を選任して経営状態の調査をさせることもあります。

 

■民事再生における担保物の扱い

民事再生手続においては、別除権(担保権)の実行は制限されません。

企業を再建しようにも、債権者に担保として取られている事業の継続に必要不可欠な建物や機械設備などについて、担保権が実行されてしまっては企業の再建はできないでしょう。

そこで、民事再生手続においては担保権の実行を一定期間において中止することができる制度が設けられています。

しかし、この中止期間は一般に3ヶ月~6ヶ月程度しか認められないため、早急に別除権者と被担保権者の分割弁済の合意などを内容とする別除権協定の締結を行うか、担保権消滅請求を行って担保権を消滅させなければならないでしょう。

具体的には、担保権者との間で担保権を実行しないように交渉し、担保価値分を分割で返済し、残りの債務については一般債権者として債務カットに応じてもらうといういわゆる別除権協定を結ぶようにしなければなりません。

実務ではこの別除権協定の締結を目指す場合が一般的です。

 

■保証人の保証債務は減額されないこと

再生計画の認可決定を得ても、保証人の保証債務が減額されるわけではありません。

むしろ、債権者(金融機関)は、債務者(民事再生申立人)が再生計画の認可により債務カットとなれば、保証人に対して保証債務の履行を求めるのが一般的です。

保証人は、別途、債権者と交渉したり、手続きをとる必要がありますので、注意が必要です。

 

 

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