民事再生の特徴とメリット

■債務は大幅にカットされて、しかも分割で払うことが可能です。

債務カットは、民事再生の大きなメリットです。

この債務カットおよびその支払方法を示すのが再生計画です。再生計画案の可決には、債権者の過半数が同意し、かつ、その同意する債権者の債権額が総債権額の2分の1以上である必要があります。

一方、仮に債務者が破産手続を選択した場合は、債務者の財産はすべて債権者に対して公平に分配されます。そうすると、債権者にしてみれば、民事再生手続の場合においても、破産した場合に予想される配当を上回る回収額が確保されなければ、同意することはしないでしょう。また、債権者としては分割で回収することに成るので、回収リスクや金利も考えなければなりません。

そうすると、債務のカット率は、破産の場合の予想配当をある程度上回る金額が最低金額ということになるでしょう。

これを清算価値保障原則といいます。

清算価値が保障されていない再生計画案を策定しても、裁判所は債権者集会の決議に付することができません。

これまでの実務上の民事再生手続における弁済率をみると、一括弁済の場合には債務額の数%の場合もありますが、10%前後というのが多いようです。

一方、弁済期間は法律上は最長10年ですが、債権者の意向により短期になる例が多いようです。

 

■経営陣が継続して業務執行することが可能です。

民事再生は、あくまで企業再建のための法的手続です。

原則として裁判所から監督委員が選任され、債務者は裁判所や監督委員の監督を受けますが、経営陣が経営権、財産の管理処分権を失わずに再建計画を遂行できます。

すなわち、経営陣が事業の経営者の地位を継続したまま、会社の再建を行うことが可能な手続です。

 

■株式会社でなくとも、組合や公益法人などの法人や個人でも利用可能な手続です。

企業再建のための法的再建手続としては他に会社更生手続があります。

しかし、この会社更生は株式会社しか利用できない手続です。

この点、民事再生には利用者の制限規定がなく、すべての種類の会社、法人、さらには法人格を有しない個人事業主も利用が可能です。すなわち、日本国内に事業所を有する外国法人、日本国内に居住する外国人、公益法人、医療法人、学校法人、さらには、自営業者でない個人でも利用可能な手続です。

また、債務の合計額が5000万以下の場合の個人を対象とした再生手続として、「小規模個人再生手続」、また、特に給与者を対象にした「給与所得者等再生手続」という簡易な特則が設定されており、この手続の場合だけは利用者は限定されています。

 

■強制執行は止まります。

企業の資産である建物や工場、それに売掛金や預金などを債権者に押さえられてしまえば、資金繰りが悪化して企業は再建できないでしょう。

そこで、民事再生手続においては、再生手続が開始されれば、これらの個別執行手続を行うことはできなくなります(民再39条)。

また、再生手続開始前であっても、申立てをするとすぐに、保全処分の申立て(民再30条)や強制執行等の中止の申立て(民再26条)により、一定の条件の下に強制執行や差押えなど債権者が個別に債権回収することを禁止することができます。

ただし、別除権に基づく執行手続は原則として止めることはできません。

 

■比較的早い手続です。

民事再生手続を申し立てて裁判所の許可がおりるまで、裁判所によって事情は異なりますが、おおむね6ヶ月から1年程度と、手早い対応が期待されており、素早い再建に向けてのスタートが可能です。

 

■債務免除益の課税を免れることができます。

債務カットが認められたとしても、そのカット分に対して課税されたのでは、もともと厳しい経営環境である場合が多い企業の再建に支障が出るでしょう。通常は、債務免除益についても法人税等の課税対象とされていますので、申告後の翌期に多額の課税負担が生じてしまうことになります。

この点、一定の条件のもと、資産の評価損益を計上することにより、債務免除益を帳消しすることも可能です。また、繰越控除期間の切れた欠損金を優先して控除できます。このようにして、債務免除に対する課税を免れることが可能になります。

ただ、このような課税問題は専門家である税理士に確認しながら進めるのが一般的です。

 

■事業譲渡や減増資手続を簡易に行うことができます。

事業譲渡や減増資手続については、会社法上は株主総会特別決議が必要とされていますが、倒産状態の会社について、株主は経営に関心を失っていることが多く、株主総会決議の成立が困難な場合があります。

そこで、民事再生法においては、事業譲渡や減増資手続を裁判所の許可や再生計画に記載することにより成立させる制度が設けられています。

 

 

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