事業再生を進める上で、企業の債権者との交渉、とりわけ金融機関との交渉は重要です。
金融機関との交渉内容は、任意整理という手法であれ、第二会社への事業譲渡+清算といった手法であれ、事業再生の成否を大きく左右します。
当事務所では、主に名古屋市内の企業の事業再生の業務を行ってきましたが、愛知県内、岐阜県や静岡県といった近隣の地域でも事業再生を行ってきました。
事業再生の内容によって、その地域における特殊性はそれぞれありますが、金融機関との交渉事項においては、どの地域においても金融機関の視点(見方)といいますか、交渉において注意すべき事項があると感じています。
以下、五つの視点から、注意事項をまとめてみました。
① 企業情報の適時・適切な開示(情報開示の視点)
どのような事業再生の手法を行うにせよ、情報開示は極めて重要です。金融機関が「企業側・経営者側が重要な情報を隠している」と考えてしまうと、進むものも進みません。
これは事業再生に限らず、金融機関との交渉・対応において重要と言えますが、とりわけ事業再生の場面では金融機関の利害と対立することが多いため、できる限り情報を開示する、有利な情報だけでなく、不利な(悪い)情報も開示するという視点が大切と考えています
② 経営者がどのように責任をとったのか(経営責任の視点)
「役員報酬の大幅カットを中心とした財務リストラを進め、同時に金融機関への条件交渉を行う」といったように、経営者がどのような責任を取るのか、という視点は重要です。
逆に言えば、金融機関に求める交渉内容によって、経営者の責任の取り方も変化する、といえるかもしれません。ある意味では当然といえます。
第二会社への事業譲渡+清算という事業再生の手法を実行する場合、金融機関の協力を取り付けようとすれば、経営者の責任はより厳しく問われます。
③ 自行だけが不利益ではないか(公平性の視点)
これも当然といえるでしょう。
「他行への返済状況」といった基本的な事実関係だけでなく、情報開示を行った上で、事業再生によって公平な負担・公平な結果になるのかどうかが重要です。
④ 計画の実現可能性は高いのか(実現可能性の視点)
事業再生には様々な手法がありますが、通常は、企業が一定の時間をかけてプロセスを経て事業の再生を目指します。
そのため、金融機関は「一定の時間を待ったとして、本当に実現するスキームなのか?」という点を注視しています。
実現可能性に関する証拠や取引先の確保、従業員の確保など、複数の観点から実現可能性を検証することになりますので、金融機関の交渉の前に十分な準備が必要になります。
⑤ 経済的合理性があるのか(経済的合理性の視点)
以上①~④の視点から検討した上で、金融機関は「はたして、この事業再生の計画は経済的合理性があるのか?」という検証を行います。
事業再生との関係で言いますと、「仮に今、企業が破産した場合の弁済(予定)額と、今後の事業再生によって得られる弁済(予定)額」との比較が重要です。
「破産した場合の弁済(予定)額 < 事業再生によって得られる弁済(予定)額」
これを清算価値保証原則といいます。
事業再生においては、清算価値保証原則を充足した事業再生の計画を立てることが必要になります。
ほかにも、事業再生において金融機関とさまざまな事項について交渉します。
ですが、以上の①~⑤の視点から事業再生の手法について事前に検証しておくことが重要です。
ご不明な点などございましたら、お気軽にご相談下さい。
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