上手な廃業の方法(会社のたたみ方)

 

最近増えている相談が、「跡取りもいないので、会社をたたみたいが、どうしたらいいのか?」というものです。

もちろん、資産超過の会社であれば、資産を処分して、負債をすべて清算すれば会社をたたむことができます。

では、債務超過の場合には、どのようにしたらよいのでしょうか?

 

最近、金融機関の融資姿勢の緩和といった事情から、倒産件数は減少していると言われています。

帝国データバンクの統計ですが、2016年の愛知県の企業倒産件数(法的整理による倒産、負債1000万円以上)は525件と3年連続で前年を下回ったとのことです。

その一方で、中小・零細企業を中心に後継者難や代表の高齢化が深刻化しており、倒産に至らないまでも、休廃業・解散」を選択する件数が倒産件数の約2.4倍の1245件にのぼりました(帝国データバンクの統計によります)。

 

企業が「会社をたたむ」=「休廃業・解散する」と決断する理由や経緯は様々ですが、選択肢は大きく分けると以下の通りです。

 

資産超過の企業 → 資産を処分して負債を弁済 → 企業は解散

 

債務超過の企業 → 事業停止 →①法的清算の申立(自己破産・特別清算)

               →②法的清算しないまま休眠

 

 債務超過の企業が「続けられないので、事業を停止します。会社をたたみます」という場合、「法的清算を行います」というケースが多いでしょう。

ただ、中には債務超過の企業が事業を停止した後、「法的清算をせずに放っておきます」「法的清算を行う費用がありません」という対応をする方がいます。

 

当事務所では、様々なケースを見てきましたが、事業停止→②休眠という方法はおすすめしません。

理由は大きく二つあります。

第1は、費用面についてです。

「法的清算をせずに放っておきます」という法人の場合、ほとんどが「法的整理をする費用がないです」「費用がもったいないです」というケースがほとんどです。

他方、債務超過の企業が事業停止した場合、通常は、残余財産は放置されるか、あるいは関係企業に安くたたき売られてしまいます。

しかし、債務超過の企業が、法的清算を行うために費用を捻出するとして、残余財産を適正に評価し、関係企業に売却することができます(場合によっては事業譲渡として売却します)。買い主(通常は、債務超過の企業の関係先)も、後日トラブルに発展するよりも、適正に評価して買い受けた方が安心ですので、ほとんどのケースでは適正評価による残余財産の売却が可能です。

残余財産の売却によって、一定程度の法的清算の費用が捻出できます。

 

第2は、債権者側の対応です。

債権者からしますと、債務者が事業を停止したにもかかわらず、法的整理をせずに法人が残っていると、決算上は「売掛金」あるいは「貸付金」として債権が残ってしまいます。ですので、会計処理が終わらないことになります。

そのため、法人側が債権者に対して、何らかの協力を求めることがあっても、債権者は「まず法人の法的整理をして、不良債権の会計処理を終わらせたい」と要求することがほとんどです。

ですので、債権者側の対応から考えても、法人を放置するのではなく、法的整理を進めるほうがメリットがあります。

 

第3は、法的整理のメリットが受けられることです。

まず、債務超過の企業が法的に清算されますので、債権者側も、それ以上の追求ができなくなります。休眠にとどまる場合、債権者は、不信感を募らせることもあり、休眠会社の関係者(とくに経営者)が次に新しい事業を開始する場合、ハードルになることがあります。

 

また、債務超過の企業の場合、経営者自身が負債の連帯保証人となっており、事業停止によって債権者(金融機関やリース会社など)から「連帯保証の責任を追求する」として請求を受けることが多くあります。その場合、経営者の個人保証債務の整理は、最近は「経営者保証のガイドライン」にしたがって整理できれば、経営者自身が自己破産することなく、個人のインセンティブ資産を残すといったことも可能になります。

ただ、経営者の個人保証の債務を「経営者保証のガイドライン」にしたがって整理するためには、主債務者である企業が法的清算といった手続きをとっていることが必要となります(すくなくとも、主債務者を休眠させて、連帯保証人だけ「経営者保証のガイドライン」によって整理するということは困難でしょう)。

ですので、経営者にとって、法的清算を行うことは、自己の保証債務を整理しうるというメリットもあります。

 

 今後、会社をたたむ(廃業・解散・清算)ことを検討されている方は、残余財産の売却や連帯保証債務の整理といった諸点を慎重に考えた上で進められることをお勧めします。

 ご不明な点などございましたら、ご相談ください。

 

 

 

 

 

 

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