事業譲渡+特別清算による再生スキーム ②リスケの出口戦略と特定調停

前回のコラムの続きです。

リスケが先行している中小企業における出口戦略と特定調停スキームのメリットを考えます。

 

<対象企業>

A株式会社 製造業(50年以上の社歴)

社 員 数 30名未満

売 上 高 5億未満

借 入 金 長期:3億以上(複数の金融機関:保証協会による保証付き)

      短期:1億以上(複数の金融機関:ノンバンク含む)

 

A社は後継者が不在であり、業績の落ち込みより、数年前からメインバンク主導(中小企業再生支援協議会の協力)による「リスケ」を継続中。

同業他社のB社(古い付き合いのある有力企業)がA社の支援に名乗りを挙げたものの、A社の資金繰りが厳しくなり、破産するか否かという状況に。

 

A社は、バンクミーティングにおいて、「B社によるM&A(事業譲渡)」を提案しました。

問題は、A社の金融機関からの借入金債務の処理です。

A社は「私的整理」による処理を提案し、具体的には以下の2つのスキームを検討しました。

①「特定調停により金融債権だけをカットするスキーム」

②「中小企業再生支援協議会における再生計画案により金融債権だけをカットするスキーム」

 

私的整理のメリットは、対象とする債権者を選定し、取引債務(取引先)を除外することができる点です。

①特定調停スキームも②中小企業再生支援協議会スキームも、取引先を除外することができるというメリットは共通です。

しかし、①特定調停の場合には、特定調停法17条により、裁判所が決定を出すことができると定められています(いわゆる17条決定)。

17条決定が出されると、債権者から異議がなければ、2週間で決定が確定します。そのため、一部の強硬な債権者がいる場合に有効、と説明されることがあります。

これは、②中小企業再生支援協議会スキームには無い制度です。

 

A社も、取引先を除外し、借入金に関する金融機関だけを対象債権として選定しました。

ただ、借入金の中で、短期借入金としてノンバンクから借り入れている債務がありました。

そこで、A社は、「ノンバンクも対象として、①特定調停スキームを実行し、ノンバンクが反対すれば17条決定を求めたい」と提案しました。

 

しかし、この提案には金融機関側が反対しました。その理由は、「17条決定に異議が出される可能性があるので、それであれば①特定調停スキームでの処理には応じられない」というものでした。

やはり、私的整理では対象債権者の全員の同意が原則ですので、ノンバンクを対象とすれば、そこも含めて全員の同意が得られることが必要になります。

そうしますと①特定調停スキームにおける17条決定という制度は大きなメリットではない、ということになります。

 

むしろ、通常、苦況の中小企業の場合ではリスケが先行してバンクミーティングが実施されていますので、従前のバンクミーティングの内容を前提として、②中小企業再生支援協議会スキームを実行する方がスムーズに移行できるのではないかと思われます。

実際、A社は、従前のバンクミーティング(中小企業再生支援協議会が協力)を前提として、②中小企業再生支援協議会スキームを検討するという手法をとりました(ノンバンクは、対象債権者には入れずに、一般の取引先と同じ扱いにしました)。

ですので、リスケが先行している中小企業における出口戦略としては②中小企業再生支援協議会スキームが有効である場合が多いように感じています。

 

次回以降のコラムにおいて②中小企業再生支援協議会スキームの流れやポイントをご説明していきます。

 

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