飲食店の営業譲渡 手順のまとめ②営業譲渡の実行(負債の切り離し)

今回は「飲食店の営業譲渡 手順のまとめ」の第2回になります。

 

今回は②営業譲渡の実行(※債務の切り離し)について解説していきます。

今回の内容を理解して頂ければ、飲食店の営業譲渡の準備と債務の切り離しの手順が理解できると思います。

 

今回も以下の具体例をもとに解説していきます。

 ■A株式会社(a代表取締役)が飲食店Bを経営。

 ■A株式会社はBの開業資金や運転資金の借り入れが膨らみ債務超過。

 ■a代表取締役は、知り合いのC株式会社にBの営業譲渡を検討。

 ■営業譲渡後、A株式会社は破産(特別清算)を予定。

 

第1回のふりかえりですが、【飲食店Bの営業譲渡に向けた準備】の手順は以下の通りです。

 

1 A株式会社の決算報告書・明細書(2期分)の確認

2 決算報告書・明細書から最新の「資産」をピックアップする

3 決算報告書・明細書+ヒアリングを基に「賃借・リース物件」をピックアップする

4 従業員の未払い給与の有無・雇用継続の確認

5 譲渡対価の算定+譲渡可能性の検討

6 譲渡先の探索(機密保持契約の締結)

 

以上の手順で準備を進めていきます。

次に、今回の本題である「営業譲渡の実行」に進むことになります。

具体的に手順を解説します。

 

7 機密保持契約書の締結と資料の開示 

6において【〇〇市 飲食店(種類〇〇) 譲渡対価〇〇円程度  事業譲渡】といった概要の準備をすることを解説しました。

この概要について譲受に興味を示した候補者があらわれると、機密保持契約書を締結して、基礎資料(初期資料)を開示します。

 

具体的には飲食店Bの基本情報を開示することになります。

■〇〇市〇〇町所在

■業 種: (居酒屋・イタリアンレストランなど)

■開業日: 年 月

■店 舗:賃貸(3でピックアップした賃貸借:簡略な図面を示すこともあります)

■賃料等:賃料や共益費(ヒアリングにて賃貸人の意向が分かれば記載します)

■席 数:〇〇席

■売 上:月 円程度(直近の売上:1の明細書等で確認)

■経 費:月 円程度(直近の経費;1の明細書等で確認)

■従業員:〇人(4において確認したBに関する正社員・アルバイト)

 ※とくにキーマン(店長や料理長)の意向は営業の譲渡においては重要。

■リース:〇〇(3でピックアップしたリース物件の内容、月額リース料など)

■什器類:〇〇(2でピックアップした資産の内容、レジその他)

■対 価:〇〇万円(5で査定した営業譲渡の対価)

 

ざっと以上です。

逆に言えば、以上の基礎資料をきちんと作成するためにも、①営業譲渡に向けた準備は非常に重要になります。

 

8 基本合意書の締結

買い手候補者(C株式会社)が7の基礎資料を見て、営業譲渡を進めたいと思えば、次に基本合意書を締結するのが一般的です。

基本合意書の内容はケースバイケースで、簡略な場合もあれば、詳細に作りこむこともあります。

ただ、飲食店1店舗だけの譲渡であれば、簡略なものでいいのではないかと考えています。

 

Bの譲渡における基本合意書のポイントは以下の通りです。

■店舗の賃貸借は賃貸人が「Bは退去してほしい」と強硬であれば、Cが賃借できないことがあること。

■同じように、Bのリース物件はリース会社の意向によって、Cがリース継続できない場合があること。

■そういった様々な理由で「営業譲渡が実行不可」となった場合、A・Cおたがいに「これまでの費用を払え」という請求はしないことの確認。

■対価〇〇万円の確認。ただし、〇〇という事由が発生した場合には増減あり、も確認。

■Bの従業員の雇用継続をどうするかの事前合意。

 

以上の点はすくなくとも基本合意書に盛り込んでおくべきでしょう。

 

9 各種デューデリジェンスの実施

基本合意書を締結した後、各種デューデリジェンスを実施します。

公認会計士による会計デューデリ、弁護士による法務デューデリがメインです。

ただ、①営業譲渡に向けた準備において決算報告書・明細書の確認や粉飾の有無に関するヒアリング、その他調査を進めていれば、それほど難しい問題は生じないと思います。

やはり最初の①営業譲渡に向けた準備が重要、といえます。

 

以上によって、会計面・法務面においてCが「Bの営業譲渡を進めてよい」と判断すれば、いよいよ営業譲渡の契約を締結します。

 

10 営業譲渡の契約の締結

ようやく営業譲渡の契約の締結まできました。

最後に重要な債務の切り離しを行います。

 

手順は以下の通りです。

①A社の資産と負債を明確にする。

②C社がA社から譲り受ける資産と負債を明確にする。

 ※資産だけを譲り受けて、負債は譲り受けないこともあります。

③C社が譲り受ける資産と負債を営業譲渡契約書に明記する。

 ※資産を適正に評価して、適正な対価を算定しておくことが重要です。

④A社とC社が営業譲渡契約を締結する。

 ※事業譲渡契約書のひな型

⑤C社がA社に営業譲渡契約書に基づいて営業譲渡の対価を支払う。

 

最後に、A社が営業譲渡後の資産(譲渡対価による現金が増えています)と負債を明確にした貸借対照表を作成します。

 

以上の手順で、A社に負債を残し、B店舗から負債を切り離して、C社が資産を譲り受けてB店舗の営業を継続することができるようになります。

 

分かりやすくするために、以下に営業譲渡時のイメージ図を添付しておきます。

次回が、最終回となります。最終回では営業譲渡後について解説します。

 

 

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代表弁護士  阪野 公夫

 

 

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