■ M&Aの相談が増えています
最近、新聞や雑誌の経済欄でM&Aという言葉を毎日のように見るようになりました。
一昔前までは、M&Aといえば大企業による買収、というイメージが強かったのですが、最近では中小企業間のM&Aも活発になっています。
また平成27年3月に中小企業庁などから「事業引継ぎガイドライン~M&A等を活用した事業承継の手続き~」(PDF)が公表され、中小企業における事業承継の方法としてもM&Aが活用されるようになっています。
そのため、中小企業におけるM&Aの件数も増加しており、それにともなって、M&Aを巡るトラブルも増えています。
以下では、M&Aにおける典型的なトラブルをご紹介します。
■「代金を払ってくれない!」「代金を取り戻したい!」
企業間の取引において代金の未払いということはしばしば起こります。
けれども、M&Aの取引における代金の未払いは、特有の原因があります。
具体的に言いますと、M&Aが①候補者の選定→②契約の締結→③契約の実行と進んでいくなかで、「こんな会社なら買わなかった」「最初の説明と違う」といった事態が生じて、買い手側が「代金を払わない」、あるいは「支払った代金を取り戻したい」というトラブルに発展する場合があります。
通常は、②契約の締結が済んでいますので、契約の条項にしたがって、譲渡代金を請求したり、説明違反(表明保証条項の違反)による契約の解除に基づく代金の返還請求、という法的対応になります。
いずれにしても、契約書の条項が非常に重要になります。
■「引継ぎができない!」
また、③契約の実行の後、買収側の企業が相手側企業に対して、業務の引継ぎを求める場合があります。
たとえば、M&Aの後に、相手側企業の事務所・工場に、買収側の企業の新しい担当者・役職者が常駐する、そのために業務の引継ぎを受ける、といったケースです。
とりわけ、中小企業におけるM&Aの場合、相手側企業の経営者やキーパーソンの個性が強く反映されるため、相手側企業の一部がM&Aの不満を持っている場合に「業務の引継ぎができない」「業務の引継ぎをジャマされた」といったトラブルが生じることがあります。
買収側の企業としては、早く業務の引継ぎを行って、新しい体制で相手側企業の経営を実行したいため、業務の円滑な引継ぎは重要な問題です。
ですので、買収側の企業は、②契約の締結前に、円滑に業務の引継ぎが可能かという視点からもリスクの洗い出しを行い、契約書に盛り込むべきです。
相手側企業の経営者やキーパーソンの個性にともなう「業務の引継ぎの失敗」というトラブルは、大企業間のM&Aではそこまで意識されてこなかったように思われます。