■ 事業承継
事業承継は、一般的には、主に経営が右肩上がりまたは安定している企業が、次代に事業を承継するために行う手段です。
中小企業においては、業績が悪化したケースだけでなく、後継者が不在のため、M&Aの方法によって事業承継を行う場合があります。
■ 自社株が最重要ポイント
事業承継を行う場合には、自社株式の取り扱いという問題が非常に重要です。
①相続後に親族間での争いが生じないように対策する
中小企業の事業承継においては、紛争を回避することが最も重要となります。
中小企業の場合、親族経営が多いのですが、親族は一致団結すれば強力な力を発揮するのに対して、一度対立してしまうと、これを解決することは極めて難しくなります。
親族間の対立によって、事業の存続すら危ぶまれる可能性もあります。
②事業資金を保全するために相続税対策・納税対策を行う
誰に承継させるのかが決まれば、あとは承継に伴うコストをなるべく節約することです。特に相続税は、会社そのものを評価して課税されますので、多額になります。税金を支払ったために事業資金が枯渇し、事業の縮小を図らなければならないといった事態を避けるために、相続税額そのもの引下げ及び納税方法の検討を行います。
③具体的な手法
オーナー経営者の保有する自社株式を、オーナー経営者の生前において事業承継者に移転しておく手法には、次のものがあります。
具体的な手法 | 自社株式の譲渡価額 | 実務上のポイント |
自社株式の事業承継者への譲渡 | 非上場株式の相続税評価額を基本として、定額譲渡によるみなし譲渡の規定も踏まえた適正価額の決定 | 相続税評価額を人為的に引き下げ過ぎると、時価との乖離が大きくなる。 事業承継者にかなりの資金負担が必要。 |
自社株式の事業承継者への生前贈与 | 非上場株式の相続税評価額 | 自社株式の相続税評価額の引下げ策の併用がポイント。 相続時精算課税の併用も要検討。 事業承継者の贈与税の納税資金対策として、持株の一部を事故が支配する持株会社に売却して支払原資を確保する。 |
自社株式の持株会社への譲渡 | 時価 | 時価は相続税評価額よりも高額になるので、持株会社では株式購入資金の調達・返済・金利負担を要検討。 |