本日の日本経済新聞(15面)に
「中小、事業譲渡広がる」「廃業ピーク早まる恐れ」
という見出しの記事がありました。
コロナウィルス感染拡大にともなって「中小企業が事業譲渡を模索する動きが広がっている。」とされ、さらに景気悪化で「買い手がつかない」場合には、廃業のピークが早まるおそれもあるという気になる指摘もありました。
この記事を読まれた方は、
「どうして中小企業で事業譲渡が広がるのか?」(株式譲渡じゃないのか??)
「事業譲渡の動きが広がって、買い手がつかないと廃業が早まるのはなぜか?」
と疑問をもたれた方もいらっしゃったと思います。
この点を事業譲渡の特性(メリット・デメリット)を考えながら、解説します。
まず、「事業譲渡」のメリットとして
①比較的早い
②比較的コストが安い
③譲渡対象を自由に選定できる
という点が挙げられます。
株式会社の「株式譲渡」となると、中小企業であっても、簿外債務のリスクや将来性、事業の採算性を県とするために、デューデリジェンスが実施されるのが一般的です。そのための時間やコストも必要となります。
他方、「事業譲渡」では、デューデリジェンスを実施するとしても、譲渡対象を絞った場合には、比較的早く、しかもコストを抑えてデューデリジェンスを実施し、その後の手続きも簡便に進めることが可能です。
また「会社分割」という「事業譲渡」に類似した手法においても、新設会社の登記などを要するため、早さやコストでは「事業譲渡」のほうがやや有利といえます。
このようなメリットを考えると、業績が急速に悪化した中小企業は、優良な事業部門だけを「事業譲渡」によって早期に譲渡することを検討することが増えます。
そのため、コロナウィルス感染の影響により急速に業績が悪化した場合、中小企業で「事業譲渡」が広がることになると考えられます。
さらに、「事業譲渡」は早期の事業売却による現金化という側面もあります。
すなわち、単に事業用機械といった財産だけを切り売りするのではなく、事業部門をまとめて「事業譲渡」にょって売却したほうが高値で売れることが一般的です。
とくに中小企業では、事業部門を「事業譲渡」することによって早期に運転資金を得ることが重要となる場合があります。
そのため、景気悪化によって「事業譲渡」の買い手がつかないと、運転資金が枯渇し、「廃業」に追い込まれるというケースが増える可能性が高まります。
以上のように、業績が急速に悪化した中小企業にとっては「事業譲渡」による現金化が死活問題になるのですが、買い手がつかないことによって「廃業」が早まる恐れもあるという帰結になるのです。
以上、本日の日経新聞の記事から中小企業の「事業譲渡」と「廃業」について考えてみました。