資金繰り支援による倒産の回避 ~2020年の倒産件数の減少について

先週、とある調査会社から、2020年度上半期の「倒産」は4000件弱と発表されました。

この数字は、前年同期から約5%減少したばかりでなく、2000年以降でも最少レベルにとどまったとのこと。

 

「新型コロナ関連倒産」が後を絶たない状況ですが、「倒産」全体の件数は大きく減少しました。

 

「倒産」とは、法律で明確に定義されていませんが、一般的には『企業において資金繰りが行き詰まり、事業停止すること』と考えられています。

逆に言いますと、資金繰りが回れば、倒産することなく事業が継続できる、といえます。

 

最近の企業の資金繰りに関する状況として、①保証協会付きの借り入れの増加②貸付条件の変更の増加、以上2点があげられます。

①について、全国信用保証協会連合会が発表している信用保証承諾件数は急激に増加しています。具体的には、2020年6月には昨年同月比で約6倍増の32万件近くに達したとのことです(下記の図がわかりやすいです:引用元 ダイヤモンド社のオンライン版)。

保証協会付き融資は、もし融資先の企業が破綻しても融資額の全額あるいは大部分が保証協会によって弁済されるため、金融機関とすると融資に応じやすいために積極的に利用されたものと考えられます。

 

 

また②については、金融庁の発表によりますと、金融機関に対する貸し付け条件等の変更申し込み(ほとんどがリスケ・延滞と考えられます)は3月から8月において約22万件となり、審査中や取り下げを除いた実行率は約99%にのぼる状態です。

 

以上のように、保証協会付きの融資が増加し、さらにリスケの申し込みに対して実行率が99%の状態ですので、融資を受けている企業としては、資金繰りが回る状態となっている、すなわち倒産することなく事業が継続できる状態であると考えられます。

 

以上のとおり、政府や金融機関による資金繰り支援によって、倒産が減少している(倒産せずに事業継続している)と考えられます。

 

過去のリーマンショック時(2008年)の状況を振り返りますと、今回のケースと同様に信用保証協会付き融資が急増しました。

しかし、それから約1年後、保証協会による代位弁済の数が増加した、という事実があります。

代位弁済とは、保証協会が、融資を受けている企業が返済できない状況になり、金融機関に対して保証による弁済を行うことをいいます。

ですので、リーマンショック時に保証協会付き融資を受けた企業のうち、一部の企業は1年未満で返済できない状況になり、代位弁済の実行に至ったと考えられます。

 

このように考えますと、①保証協会付きの借り入れの増加が始まった2020月4月~8月から1年未満の地点、2021年1月~4月ころにかけて、資金繰りが苦しくなる企業が増加するおそれがあると考えられます。さらに、金融機関が再度のリスケ・延滞の申し出に応じるのかどうか、という点も資金繰りを考える上で重要になります。

 

今後の政府や金融機関による資金繰り支援の追加策、景気回復の動向を注視する必要があります。

 

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代表弁護士  阪野 公夫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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