■再生と清算
事業再生の手法は、まず「再建計画の策定が可能か」という視点から「再生」と「清算」に整理できます。
おおまかに言いますと、
「再生」の手法は企業の再建を図るもの
「清算」の手法は企業を終了させるもの
という分類になります。
さらに、「再生」の中でも「私的再生」(一般的には私的整理や任意整理と呼称しますので、本ホームページでも「私的整理」(あるいは任意整理)と記載する場合があります)と「法的再生」に分類できます。
また、「清算」も「法的清算」と「私的清算」に分類できます。
この「私的」か「法的」か、という整理は、法的=裁判所が関与する強制手続き、私的=裁判所が関与しない手続き、という分類です。
ただし、「特定調停」は、裁判所が関与しますが、あくまでも任意の話合いがベースになりますので、便宜上、「私的再生手続」に分類しています。
様々な事業再生の手法は以下の表に分類することができます。
■「再生」か?「清算」か?
通常、事業再生の手法を検討する場合は、
- 「私的再生手続」ができるかどうかを検討し
- ①ができなければ「法的再生手続」が可能かどうかを検討した上で、
- どうしても「再生」できないのであれば、「清算」する
- ③の清算の場合でも、「事業」自体を活かすことが可能であれば事業譲渡等を検討する
という順に考えていきます。
では、なぜ「私的再生手続」を第一に検討すべきかといいますと、それは一般的に「私的再生手続」の方が「法的再生手続」よりも利点が多いからです。
<私的再生手続と法的再生手続のメリット・デメリット>
メリット | デメリット | |
私的整理 | ・迅速に進められる ・費用が比較的安い ・外部に知られない ・柔軟に対応することが可能 |
・不正が起きやすい ・履行が不確実 |
法的整理 | ・不正が起こりにくい ・履行が確実 ・担保実行を中止することが可能 |
・時間がかかる ・費用がかかる ・外部に知られる |
■再建計画が策定可能か?
事業再生を検討する場合、「再生」できるか、それとも「清算」せざるを得ないのか、を判断する基準となる「再建計画が策定可能か?」という検討は、とても重要です。
再生計画に関して、「私的整理に関するガイドライン」及び「中小企業再生支援協議会事業実施基本要領」によりますと、
- 3~5年以内をメドに実質的な債務超過を解消すること
- 経常利益が赤字であるときは、3年以内をメドに黒字に転換すること
という基準があげられています。
しかし、これだけではなく、以下の事情も重要であると考えています。
●経営者のやる気
経営者から、「なんとしても会社を再建、再生してみせる」という意欲や熱意を感じ取れるかはまずもって大切な要素です。
そして、その意欲や熱意が、「社員やお世話になったお客様のために」といった「人のために」という思いがあるかどうかも、重要な要素であると考えます。なぜなら、事業再生は、債権者の方々に多大な迷惑をかけるため、経営者が私利私欲のためだけに事業再生をしたいと強く願っても、周囲の賛同が得られにくいからです。
●後継者の有無
経営者が高齢の会社では、会社を再生するにあたり後継者の有無というのも大切な要素になります。仮に、後継者がいないのであれば、事業を受け容れてくれる先があるかどうかが重要になります。
●キャッシュ・フローの視点
キャッシュ・フローの視点から会社の収入と支出を検討した場合、金融機関への借入金の返済額を除けば、キャッシュ・フローがプラスになるか否か(キャッシュ・フローの視点)を検討すべきです。
●金融機関その他関係者の協力が得られるか否か
債権者、特にメインバンクである金融機関(担保権者であることが多い)の協力が得られれば会社の再生・再建に向けて大きな前進があったといえます。
●清算価値との関係(清算価値<再生による弁済)
今現在、会社を倒産させた場合の配当(清算価値)と、これから数年間会社を存続させて収益を得ようとする場合(再生)を比べて、具体的な弁済額を比較して、「清算価値<再生による弁済」となれば債権者からの協力が得られやすく再生に向けて有利な事情になります。
このような事情を総合的に検討して、再生計画が策定可能かどうかを判断すべきと考えます。