■ 法人が破産に至るまで
当事務所では、今までに法人の破産の申立や裁判所から管財人に選任されて管財業務を行ってきましたが、法人破産をする理由はまさに千差万別でした。
リーマンショック後の長引く不況の中、「過大な設備投資による破産」というケースは減っています。また、取引形態や技術も複雑化していますので、「法人破産の理由」という点を明確に論じることは困難です(逆に、それができれば、法人破産は予防できるということになろうかと思います)。
ただ、経験上、大まかに「破産の理由」を分類することができるかと思いますので、主な理由を見ていきます。
■①経営者の体調不良
経営者の突然の事故や病気により、業務が困難になる場合があります。また、経営者の死去によって業務が停止する場合もあります。
今までに経験してきた法人破産の中で、相当数にのぼるのが経営者の体調不良です。
■②法人内部の紛争(労使紛争 株主間・親族間紛争)
法人の内部で、従業員との紛争(労使紛争)が絶えなかったり、従業員の不祥事が多発して、法人が破産に至るケースも非常に多いです。同様に、親族株主などの法人内部の親族間の紛争によって、法人が破産に至るケースも多いと言えます。
そのため、「事業再生の相談」が、実は「労使紛争の相談」であったり「親族株主に関する相談」であった、ということもよくあります。
企業における「人」の問題が、まさに企業の生命線であることを物語っています。
■③売掛金の回収
大口の取引先への売掛金が焦げ付いて破産に至る、というケースも非常に多いです。
売掛金の回収は、早めの対策(督促→内容証明による通知→仮差押などの保全手続)を取ることがベターですし、金融機関からの追加融資も必要になろうかと思います。
このように、企業における「カネ」の問題を予防していくことが、破産を予防することになると思います。
■④事業価値の毀損
最終的には、法人の「事業」の価値が損なわれたから、破産(清算)により事業を終了する、ということになります。これには、様々な理由があり、まとめることは難しいですが、最終的には「事業」の価値が低下した、損なわれたから法人破産をする、ということになろうかと思います。
外部環境の変化が早く、しかも著しく変化するため、事業の価値を維持・向上することは非常に大変です。
逆に言えば、「事業」に価値があれば、事業譲渡やM&Aなどによって事業自体を継続することは可能です。法人は破産や清算によって消滅しても、「事業」(取引先や社員も含めた事業体)は存続することができるといえます。