『経営する飲食店の赤字が続いているので、営業権を譲渡したいです』
『負債を切り離して、飲食事業を譲渡できないですか』
飲食店の事業譲渡(営業譲渡)に関する相談が増えています。
ですが、飲食店の負債を切り離して営業譲渡を実行する場合、その手順が分かりにくいという相談が多いです。
当事務所では飲食店の営業譲渡を代理人として行うことがありますが、その経験を踏まえて、具体的な手順をまとめました。
そこで、今回は「飲食店の営業譲渡の手順のまとめ」(①事前準備編)を解説します。
※商法上は「事業譲渡」ですが、分かりやすいので説明上は「営業譲渡」という用語で統一します。
このブログで解説する手順を理解して頂けると、以下の具体的な手順がご理解頂けると思います。
■「経営する飲食店を営業譲渡し、飲食店の負債を切り離す」
■「負債を切り離したうえで譲受先が飲食店を継続する」
■「譲渡会社(元経営会社)は負債を清算する(破産)」
大まかな流れとしては
①飲食店の営業譲渡に向けた準備
↓
②営業譲渡の実行(負債の切り離し)
↓
③営業譲渡後の運営会社の破産・清算
となります。
そこで今回は、①飲食店の営業譲渡に向けた準備について解説します。
営業譲渡は事前の準備がとても重要です。
分かりやすくするために以下の具体例をもとに解説していきます。
■A株式会社(a代表取締役)が飲食店Bを経営。
■A株式会社はBの開業資金や運転資金の借り入れが膨らみ債務超過。
■a代表取締役は、知り合いのC株式会社にBの営業譲渡を検討。
■営業譲渡後、A株式会社は破産(特別清算)を予定。
【飲食店Bの営業譲渡に向けた準備】
1 A株式会社の決算報告書・明細書(2期分)の確認
まず当事務所では決算報告書・明細書の確認をします。
なぜなら、A株式会社が破産した場合、裁判所・管財人は必ず決算報告書・明細書(少なくとも2期分)を調査するからです。
「実は粉飾があります」ということもよくあり、どこをどのように粉飾したのか、場合によっては税理士の先生に実態を示すBSの作成をお願いするときもあります。
また「経営者が手書きの申告書を作って税務申告するだけで、明細書なんて無いよ」というケースも稀にあります。この場合、税理士の先生にお願いして、直近1期分の決算報告書・明細書を作成してもらうときもあります。
以上のように、まずは決算報告書・明細書(2期分)を確認します。
2 決算報告書・明細書から最新の「資産」をピックアップする
次に、決算報告書・明細書からA株式会社の最新の「資産」をピックアップします。
これを基に、さらに詳細な「飲食店Bの財産目録(最新の資産明細:簿価&実勢価格)」を作成します。
これが非常に重要です。これに漏れがあると作り直しというだけでなく、後になってスキーム全体の変更が迫られることもありますので、A株式会社のa代表取締役や経理担当者からヒアリングを行って漏れが無いように作成します。
3 決算報告書・明細書+ヒアリングを基に「賃借・リース物件」をピックアップする
2と同時並行して、決算報告書・明細書(さらにヒアリングも行って)から飲食店Bの「賃借・リース物件」をピックアップします。
飲食店は、店舗やレジ・厨房機器の一部等をリースしているケースが多いです。
そのため、C株式会社が飲食店Bを経営する場合に必要な「賃借・リース物件」を明らかにした上で、賃貸人・リース会社と事前協議する必要があります。
具体的には、店舗の賃貸人、レジや厨房機器のリース会社です。
飲食店は「場所」が非常に重要であることが多いので、なかなか移転が困難です。そのため店舗の賃貸人との交渉が非常に重要になります。
そのため、「賃借・リース物件」をピックアップした上で、さらにヒアリングを進めて、「他の会社が賃借・リースすること」が可能かどうかも検討します。
仮に、この時点で「店舗の賃貸人が飲食店Bの退去を強く求めている」「飲食店Bの重要なリース物件の継続が不可」ということが明らかになれば、営業譲渡自体を断念せざるを得ない、という場合もあります。
4 従業員の未払い給与の有無・雇用継続の確認
次に、a代表取締役に対して、飲食店Bの従業員・アルバイトに対する未払い給与があるかどうか、今後、C株式会社が飲食店Bを経営する場合に雇用継続が可能かどうか、こういった点を確認します。
5 譲渡対価の算定+譲渡可能性の検討
以上1~4を検討し、「飲食店Bの営業譲渡ができそうだ」という見込みを確認した後、「譲渡対価」を算定します。
具体的には、上記2の【飲食店Bの資産全体の実勢価格】を基に譲渡対価を算定します。
譲渡対価=現時点の飲食店Bの資産の実勢価格の合計+α(のれん代等)
おおまかには以上のように算定します。
DCF法、キャッシュフローを基に算定などなど、種々の算定方法があります。
しかし、飲食店Bの営業譲渡(事業譲渡)+A株式会社の破産という場合、飲食店Bは赤字店舗のケースがほとんどです。
また昨今の新型コロナウィルス蔓延に伴う外食減少の傾向からしますと、黒字店舗の譲渡はまずありません。
ですので、「飲食店Bの利益を見込んで譲渡対価を算定する」というのは、「赤字だから価値0」という結果になりかねません。
そのため、上記のように【飲食店Bの資産の実勢価格の合計+α(のれん代等)】を基に、飲食店Bの営業譲渡の対価を算定するほうがよいと考えています。
また、A株式会社が破産した後に、飲食店Bの営業譲渡が破産手続きが必ず論点となりますので、譲渡対価の算定は非常に重要です。
6 譲渡先の探索(機密保持契約の締結)
以上の手順で譲渡対価を算定した後、通常は、M&A仲介業者等を通じて、営業譲渡を受けてくれる会社があるかどうかを探します。
具体的には、【〇〇市 飲食店(種類〇〇) 譲渡対価〇〇円程度 事業譲渡】といった概要を提示して、譲渡先を探すことになります。
ただ、飲食店Bのように赤字店舗の場合、なかなか買い手が見つからないことが多いです。
そのため、譲渡先を広く探しつつ、知り合いのC株式会社に正式に営業譲渡を提案する、ということが多いです。
C株式会社は、場合によっては財務DDを実施して、飲食店Bの赤字原因が何かや赤字原因を除去できるかどうか等を調査することがあります。
そのうえで【譲渡対価〇〇円】その他譲渡条件について詰めた交渉を行います。
以上のように、M&A仲介業者等にA株式会社や飲食店Bの機密情報を開示することになりますので、事前に機密保持契約書を取り交わします。
以上の手順で飲食店Bの買い手(営業譲渡先)を探し、譲渡条件がまとまれば合意に進むことになります。
以上が①飲食店の営業譲渡に向けた準備となります。
後日、②営業譲渡の実行(負債の切り離し)・③営業譲渡後の運営会社の破産・清算についてもブログにアップしてきます。
ご不明な点等がございましたら、無料相談をご利用ください。よろしくお願いいたします。
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